いつまでも元気にプロジェクト井上病院

いつまでも元気にプロジェクトとは

井上病院は腎臓・透析の専門病院として、一歩進んだ透析医療を提供できるよう日々努めています。その取り組みの一環として、2017年より「いつまでも元気にプロジェクト」に取り組んでいます。
しっかりと透析をおこなうだけでなく、患者さんに合った十分な“栄養”摂取と、適度な“運動”をおこなうことで筋力低下を防ぎ、「(自分で歩けるなどの)身体機能を維持」することで、透析患者さんの健康寿命を延ばしたいという取り組みです。また、しっかり食べてしっかり動いたあとは、しっかりとした体の休息も必要であると考え「疲労感の軽減」を図ることを、このプロジェクトの目標にしました。
多職種それぞれの専門知識を生かし、「栄養」・「運動」・「疲労/睡眠」の3項目から患者さんの評価を行い、結果をもとに改善方法を個別に医師へ提案していきます。 栄養・運動・疲労 多職種

栄養

BDHQ・NRI-JHを用いて評価し、結果の返却・栄養指導・医師への食事の提案などをおこなっています。

①BDHQ(簡易型自記式食事歴法質問票)による食事内容把握と結果返却

誕生月にBDHQを配布し、過去1か月間の食事摂取内容を記入していただき、習慣的な栄養素摂取量・食品摂取量などを評価します。

食事情報を基に管理栄養士による栄養指導を実施しています。
結果用紙を用いてエネルギー・たんぱく質・食塩・カリウム・リンについて1日のおよその摂取量や、どの食品から摂取しているかが分かります。
BDHQ

②NRI-JH(nutritional risk index for Japanese hemodialysis patients)による栄養状態の評価と結果返却

毎年6月に、BMI・年齢/男女別の血清クレアチニン・血清アルブミン・総コレステロール値で評価します。
11点以上(13点満点):高リスク、8~10点:中リスク、0~7点:低リスクに分類します。

食事・運動・日常生活に関するワンポイントアドバイスが書かれた結果用紙を全員に配布しています。
また中リスク(8点以上)の方へは栄養指導を行い、7点以上の方に対しては半年後に再評価も行います。
結果シート

③BDHQ・NRI-JH結果の栄養指導について

食事内容から減塩やたんぱく質摂取など個別に必要な食事調整をアドバイスしたり、宅配食や栄養補助食品の活用方法について情報提供もおこないます。 また、経口摂取不十分な低栄養患者さんに対して透析中の点滴も医師へ提案しています。必要な患者さんに対して、継続的な栄養指導で経過をフォローしています。
栄養補助食品

運動

サルコペニアとフレイルの診断に用いられる、6種類の身体機能測定・認知機能・ADL・転倒の有無・フレイルを確認する問診をおこない評価し、結果を返却して運動指導を行っています。

①身体機能検査

身体機能検査

DASC-8(認知・生活機能質問票)と過去1年間の転倒の有無、フレイルについての問診を行います。

評価後は、過去2年分の結果と同年代の平均値、結果を元に作成した運動プログラムを掲載した用紙を配布し、運動指導をおこなっています。
結果シート


②集団体操の実施

セルフエクササイズの実践・継続が難しそうな患者さんに対しては、監視下で行う集団体操への参加を推奨しています。ADL・身体機能の維持を目的とした体操を、週1回20分間、透析前に実施しています。
集団体操


③透析中運動療法の実施


透析中の運動療法も2022年9月から実施しています。
透析運動療法

疲労・睡眠

海外には、腎臓医療で達成すべき目標は『医療者だけでなく患者さんも加わって設定すべきである』という 「SONG」(Standardized Outcomes in NephroloGy)というプロジェクトがあります。「SONG-透析」では生命予後や心血管合併症の予防と同様に「疲労感の軽減」も目標の1つにあげられています。いくら良い透析を受けて合併症がなかったとしても、疲労困憊の状態では健康とは言えません。 そこで、自律神経バランスチェックや睡眠アンケートを実施しています。

①疲労度・ストレスの測定

装置(バイタルモニター)と、アプリ(疲労博士)を使用して自律神経バランスチェックを行います。
疲労測定

②疲労と睡眠のアンケート実施

▪疲労に関するアンケート:MFI(Multidimensional Fatigue Inventory)
▪アテネ不眠尺度AIS:(WHOによる「睡眠と健康に関する世界プロジェクト」が作成した世界共通の不眠症判定法)
▪睡眠時無呼吸の評価(ESS:Epworth Sleepness Scale)
を行います。

③両方の結果より改善案を提案

結果をもとにアドバイスが書かれた用紙を配布しています。また、疲労度の強い患者さんは、臨床工学技士より主治医へ透析条件の変更を提案しています。 また、睡眠アンケート結果で睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いがある場合は、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)を勧め、睡眠時無呼吸症候群の診断がつけば、CPAP(シーパップ)導入により睡眠の質を改善し、疲労軽減に繋げます。 疲労測定

最後に

透析患者さんがいつまでも元気に透析生活を送っていただくことで、職員もやりがいや元気をもらっています。これからも透析患者さんが「身体機能を維持」「疲労感の軽減」を達成することで、井上病院で透析治療を受けて良かった。と感じてもらえるよう、多職種でのこの取り組みを継続します。

《院内掲示ポスター》

ポスター ポスター

いつまでも元気にプロジェクト 患者さんインタビュー動画



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