お知らせ井上病院

「カルニチン治療中の透析患者さんで下肢筋力が上昇」
~井上病院の臨床研究が国際医学雑誌に掲載されました~

おしらせ

井上病院では、「カルニチンというお薬が投与された透析患者さんの筋力がどのような影響を受けるか」というテーマで、臨床研究を進めていました。

その研究で、同意いただいた透析患者さんのデータを解析したところ、カルニチン欠乏症に対してエルカルチン静注製剤を使用していた群は、1年後に下肢筋力(膝を伸ばす筋力)が有意に上昇し、カルニチン治療をされていなかった群では下肢筋力は低下傾向にありました。

1年間の下肢筋力の変化量は2群間で統計学的な有意差が認められ、年齢・性別・糖尿病の有無・心血管疾患既往歴などを考慮しても、カルニチン治療の有無が下肢筋力の変化と密接に関連することが認められました。この研究結果は、Nutrients誌(栄養素という意味の国際医学雑誌)に掲載されました。

カルニチンはエネルギー産生に必要な栄養素で、体内でも合成されますが、主に食事中の赤身肉などから摂取されます。透析患者さんでは食事のタンパク制限や、体内での合成の低下、透析による除去などの理由で、カルニチン欠乏が生じやすくなると考えられています。透析合併症として知られている心機能低下や貧血などの病態の一部にカルニチン欠乏症が関与する可能性は以前から指摘されていました。今回の研究は、カルニチンと下肢筋力との関連を示した観察研究になりました。透析患者さんが自立した日常生活を送れるようにお手伝いするための新たな可能性を示すことができたのではないかと考えています。

本研究にご協力いただきました患者さん、ご指導いただきました方々に、心より感謝申し上げます。

                                 リハビリテーション科 松藤 勝太、山口 勝生




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