糖尿病内科の概要
井上病院は1975年の開院当初から糖尿病診療にも積極的に取り組んできました。
糖尿病とは、インスリンの作用が十分でないためブドウ糖が有効に使われずに、血糖値が高くなっている状態のことです。放置すると全身にさまざまな影響が出てきます。
平成26年調査によると、糖尿病患者数は950万人で、そのうち総継続的な治療を受けている患者数は316万6,000人です。
糖尿病による年間死亡数は13,669人で、失明原因の第2位が糖尿病による網膜症、血液透析となる原因の第1位が糖尿病性腎症、糖尿病患者の脳卒中の危険度は糖尿病でない人の3倍、心筋梗塞・狭心症の危険度は糖尿病でない人の3~4倍と言われています。
しかし糖尿病自体は自覚症状に乏しく、糖尿病と診断されていても放置されがちな疾患です。放置していると、腎不全・網膜症・神経症状などの合併症を引きおこします。
重篤な合併症を引き起こす糖尿病ですが、発症早期より血糖コントロールをしっかり続ければ、これらの合併症を防ぐことができます。血糖コントロールは診療やお薬による治療だけでなく、生活習慣の改善が重要です。
井上病院では専門医による糖尿病専門外来を行っています。健康診断などで糖尿病と言われた方や糖尿病予備群と言われた方は、是非当院を受診ください。
当院の糖尿病診療の特色
血糖コントロールのほか糖尿病合併症予防、特に糖尿病性腎臓病(DKD)の進展予防に力をいれ、最新最適な治療を提供します。
当院では慢性腎臓病の一貫治療を掲げ, 腎臓病の初期から末期まで最善の医療を目指し、腎臓・透析医療と地域医療とに取り組んできました。
近年、糖尿病での腎合併症の中には、アルブミン尿やタンパク尿が検出されなくても腎機能が低下している症例が増えています。
これらは高齢化や高血圧による腎硬化症の影響と考えられ、糖尿病性腎臓病(Diabetic Kidney Disease; DKD)という新しい概念が生まれました。
DKDの早期発見と対策のためには、尿中アルブミンや腎機能(eGFR)の経過を定期的に検査することが大切です。
さらに当院では、高齢化により多様化する病態に対応できるように栄養指導や運動療法なども積極的に取り入れています。
外来診療
▼ チーム医療
糖尿病治療の目標は、糖尿病の合併症の発症増悪を防ぎ、健康人と同様な日常生活の質(QOL)を保ち、健康人と変わらない寿命を全うすることです。
なかなか仕事が休めない方や高齢の方などの生活環境に合わせた治療を行えるように、糖尿病学会専門医の医師、糖尿病養指導士、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師・理学療法士がチームとなって糖尿病患者さんをサポートします。
▼ 糖尿病透析予防指導
人工透析を受けている患者数は約33万人で、その数は毎年約5,000人ずつ増え続けています。人工透析を始める原因の第1位は糖尿病性腎症です。また、高血圧を原因とする腎硬化症による透析導入も増加しています。
当院では,適切な導入までの期間を延長させること、透析導入を減少することを目的に、医師,管理栄養士,看護師、理学療法士が連携して食事指導、運動指導、その他生活習慣に関する指導を重点的に行う糖尿病透析予防外来を開設しています
▼ フットケア外来
足病変の早期発見治療に努めています。木曜日午後。当院血管外科への紹介も行っています。
外来で行うことができる専門的な検査
フラッシュ血糖モニタリング(FGM)
24時間の血糖変動を15分毎に最長14日間記録し、通常の血糖自己測定では分からない夜間睡眠中の血糖などを知ることができます。
神経伝導検査
ふくらはぎで簡易、迅速に末梢神経機能を評価し、糖尿病神経障害の程度を判定します。
動脈硬化検査
頸動脈エコーや、血管の詰まりや硬さを調べるABI、PWVなどおこない、動脈硬化性疾患のリスク判定を行います。
入院診療
- 糖尿病教育入院(5日間~7日間)
- インスリン導入、糖尿病教育入院(6日間~7日間)
- 週末インスリン手技入院(土曜日入院、月曜日退院)
医師紹介
辻󠄀本 吉広
[病院長]
■ 資格
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本透析医学会透析専門医・指導医
日本糖尿病学会専門医・研修指導医
日本腎臓学会腎臓専門医・指導医
日本腹膜透析医学会認定医
ICD(インフェクションコントロールドクター)
木津 あかね [糖尿病内科部長]
■ 資格
日本内科学会認定内科医
日本糖尿病学会専門医・研修指導医
下村 菜生子 [透析内科部長]
■ 資格
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本糖尿病学会専門医
日本透析医学会透析専門医・指導医
土蔵 尚子 [糖尿病内科医長]
■ 資格
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
日本糖尿病学会専門医・研修指導医
宮部 美月 [糖尿病内科医長]
■ 資格
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
日本糖尿病学会専門医
日本透析医学会透析専門医
NST認定医
施設認定
日本糖尿病学会認定教育施設(H12.11.27)
対象疾患・治療について
糖尿病といわれたら
「糖尿病」とは血糖を下げるホルモン「インスリン」の効きめが悪くなったり、量がたりなかったりして血糖値が持続的に高くなる病気です。
▼ 糖尿病になったらどうしたらいいの?
糖尿病は、長いおつき合いをしていく病気です。
自分の身体と病気について正しい知識をもって向き合っていくことで、糖尿病であっても病気のない人と同じように、食べて歩いて動ける生活を目指しましょう。
▼ 糖尿病だと何がよくないの?
▼ サルコペニア・フレイル対策
サルコペニア(筋肉量減少に伴う身体機能の低下)や、フレイル(加齢に伴う身体予備能力の低下)になると、健康寿命が縮まり、様々な病気や合併症にかかりやすくなります。特に糖尿病患者さんではサルコペニアの合併が多いことが知られています。
糖尿病で通院されている患者さんでもサルコペニアやフレイルの評価、生活習慣病、食事、運動習慣などについてチェックし、サルコペニアやフレイルの危険性が高い患者さんには生活習慣、栄養・運動指導をお聞きいただくことでこれらの危険性を下げるよう指導しています。
サルコペニアチェック
血糖コンロトール・腎不全進行予防のために、要介護・寝たきりにならないために、当院ではサルコペニアチェックを行っております。
・場所:内科外来
・測定時間:約5分
・チェック内容:握力測定、6m歩行速度測定、筋肉量測定(InBody)
▼ BDHQを用いた食習慣チェック・栄養指導
糖尿病・腎臓病を改善するために食事について一緒に考えてみませんか。
当院ではBDHQ(簡易型自記式食事歴法質問票)を使用し、管理栄養士が一人ひとりの生活スタイルに合わせて食事のアドバイスを行っています。
通常の食事記録では、ある一時点での食事内容しか把握できませんが、BDHQでは最近1か月間の
食習慣や食事・栄養の摂り方を知ることができる調査表です。およそ15分で回答出来るため診察の待ち時間に記入いただけます。
患者さん、医療機関の方へ
当院には糖尿病を専門としている日本糖尿病学会専門医や研修指導医の資格を有している内科医師も多く、糖尿病診療スタッフが充実しているのが特徴です。
糖尿病の合併症を予防するためには早期から血糖コントロールをすることが重要です。
医師、管理栄養士、糖尿病療養指導士らによって定期的にこれらの病気に対する患者さん向けの勉強会なども行っております。
あなたに合せた糖尿病治療とは
血液検査、尿検査
まずは人によって異なる糖尿病の状態について検査します。
インスリンが出にくいタイプ?インスリンが効きにくいタイプ?自分にあった治療を知ることが第一歩です。
栄養相談
井上病院では、日本糖尿病学会の推奨にもとづいた標準食事療法を行っています。
今の食生活があなたに合っているのかどうか、マンツーマンで相談できます。
適切な薬物療法
糖尿病は近年の治療進歩がめざましく、多くの有効な薬がでてきています。
あなたにとってベストな治療を提案していきます
動脈硬化検査、骨粗鬆症検査、心臓・腹部超音波検査、眼科検査、睡眠時無呼吸検査
糖尿病によって起こってくるさまざまな病気について井上病院では院内で詳細な検査をすることができます。
(症状がなくても)年に1回チェックをうけましょう!
もしものときも
かかりつけ患者さんは夜間にも症状に応じて受診相談・入院加療が可能です。
高度な専門加療が必要な場合、迅速に適切な施設へ転院依頼を行います。
糖尿病患者さんの入院を受けつけています
井上病院では糖尿病患者さんの入院を受けつけています。
- 別で暮らしている親が認知症みたいなんだけど、ちゃんと薬がのめているか心配・・・
- インスリン注射をしているけれど、注射回数を減らしたい。
- いまの治療は本当に自分に合ってるんだろうか?
「糖尿病教育入院」を通じて上記のような疑問や不安を解消していただければと思います。
糖尿病教育入院とは
糖尿病について理解を深めていただくために、食事のカロリー計算や、自己血糖測定、インスリン自己注射などを覚えていただき、合併症の有無や程度を詳しく検査する短期間の入院を行っています。
専門医による指導だけでなく、看護師による生活指導や管理栄養士による栄養指導、薬剤師による服薬指導、理学療法士や運動療法士による運動指導などを受けていただいております。