透析合併症について
シャント手術
当院ではさまざまなシャントトラブルに迅速に対応しており自己血管内シャントの作製だけでなく、人工血管シャントの作製も数多く手がけています。
院外からの手術依頼も多く、緊急手術にも対応しております。また緊急性のないシャントトラブルに関してはシャント外来での診察も行っております。
VAIVT(シャントPTA)
当院ではシャント狭窄に伴うシャントトラブルに対し、閉塞する前にVAIVT(シャントPTA)を行っています。
またシャントの血栓閉塞に対してもほぼ全例をカテーテル治療にて対応しています。
シャントに使うことができる血管は限られており、当院では透析室でのシャント音・触診・静脈圧によるモニタリングを毎回の透析で行っています。
異常があればシャントエコーで狭窄の評価・シャント血流量の測定を行い、閉塞する前にシャントPTAを行っています。
重症下肢虚血に対する下肢EVT(下肢カテーテル治療)と下肢バイパス手術
透析患者さんは下肢動脈病変の有病率は極めて高く、治療が遅れると下肢切断となることも少なくありません。
下肢大切断に至ると、ADLは大きく低下し日常生活の介助も必要になります。また重症下肢虚血は下肢切断となるだけでなく、生命に関わることも多い疾患です。
当院では透析患者さんの重症下肢虚血に対する治療を積極的に行っています。
重症下肢虚血の治療には下肢EVTと下肢バイパス治療がありますが、これらはお互いが相補的な治療として適切な時期に適切な治療を選択することが下肢切断を最小限に食い止める唯一の方法です。
当院では専門の血管外科医が下肢EVT治療と下肢バイパス治療の両方を行なうことで適切な治療選択が可能となっています。
腹腔鏡による透析腎癌摘出術
透析患者さんは腎癌の罹患率は非常に高いことが知られています。
当院では腹部超音波検査や腹部CT検査によるスクリーニング検査を行い腫瘍が疑われた症例には積極的に造影CTを行うことで透析腎癌の早期発見に努めています。
透析腎癌は造影効果の乏しい腫瘍も多く、診断が容易ではありませんが、当院で摘出された透析腎癌は平均2.2cmとその多くが早期発見・早期治療されています。
また腹腔鏡を用いた低侵襲手術を第一選択としています。
透析整形外科
透析患者さんは骨折が多いことや、脊椎関節症(頸椎・腰椎・肩関節・股関節・膝関節など)、手根管症候群の合併症が多いことが知られています。当院では整形外科専門医が、透析患者さんの骨粗鬆症・骨折・脊椎関節症・手根管症候群に対し適切な診断・治療(手術も含め)を行っております。実際、骨粗鬆症をしっかりと治療することにより当院の透析患者さんの骨折は減少しており、2024年に透析患者さんの骨粗鬆症の治療に関する論文で、日本骨代謝学会の論文賞をいただいております。また手根管症候群の手術をしていることが必須であるβ2-ミクログロブリン吸着カラムに関しても多くの実績があり日本透析学会でも報告しております。お困りのことがございましたら是非当科を受診なさってください
いつまでも元気にプロジェクト
近年は透析患者さんの高齢化や糖尿病の増加にともない体力の落ちた患者さんが増え、透析患者さんの感染症が大きな問題となってきています。 そこで我々は徹底した感染症対策だけでなく、栄養・運動療法での積極的な介入を行うことで免疫力を向上させ、透析患者さんにいつまでも元気に生活していただける取り組みを進めています。
オーラルフレイル
オーラルフレイルとは
口に関するささいな衰えを放置したり、適切な対応を行わないままにすると、口の機能低下・食べる機能の障がい、さらには心身の機能低下まで繫がる負の連鎖が生じてしまうことです。それに対して警鐘を鳴らした概念です。
負のライフイベントなどにより、生活環境などの変化が生じ、口腔保健への意識が低下し、次に日常生活において、滑舌低下・噛めない食品の増加・むせ などが生じ、こういった状況を放置してしまうことにより、食欲低下や食品多様性の低下に至ります。さらに、口腔機能低下(咬合力低下・舌運動機能低下など)が生じ、低栄養・サルコペニアのリスクが高まり、最終的に食べる機能の障がいを引き起こすことになります。
当院でも「いつまでも元気にプロジェクト」の一環として低栄養の方を対象に『オーラルフレイルチェック』を行っています。
低栄養の方へセルフチェック表を用いて管理栄養士より聞き取り調査を行い、結果から看護師を含むチームにより、食事指導や口腔ケアについてアドバイスをさせていただいています。
オーラルフレイルの対策
日本歯科医師会ホームページにオーラルフレイル対策のための「口腔体操」が公開されていますぜひ実践してみてください。
※出展:一般社団法人日本歯科医師会