学術活動井上病院

論文発表

 

最新

「透析患者がやりづらいと思っている動作には低い筋力が対応する」

Matsufuji S, et al. Patient-reported difficulty in activities of daily living and corresponding muscle weakness in elderly patients undergoing haemodialysis.
Nephrology (Carlton). 2024 Feb 13. doi: 10.1111/nep.14279.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/nep.14279

井上病院の高齢透析患者を対象に、主観的な日常生活動作(ADL)の困難感に筋力が関連することを横断的に検証した論文が、Asian Pacific Society of Nephrologyの学会誌Nephrology (Carlton)誌に掲載されました。
(1)患者さんの自覚しているADL困難感には対応する筋力の低下があることに加え、
(2)客観的評価Barthel IndexではADLは自立していると判断される場合でも、その大部分の患者
  さんはADL困難感を自覚していることが明らかになりました。
本研究の結果は、高齢透析患者が動作のやりづらさを感じている場合に、どの筋力を鍛えればよいのかの治療に役立てることができると考えています。
本研究にご協力いただきました患者さんとご指導いただきました先生方に、心より感謝申し上げます。
                                松藤勝太、李寿恵、辻本吉広



「義足を使用することで、下腿切断後の透析患者さんの日常生活動作能力を維持できる可能性あり」

井上病院リハビリテーション科では、「下腿切断後の透析患者さんに対して、義足を作製・使用することは、日常生活動作能力の改善に関連するのか」というテーマで研究を進めていました。

2012年4月~2020年10月末日までの期間で、当施設で下腿切断後の透析患者さんの手術前後の日常生活動作能力を、義足を作製した群と義足を作製しなかった群の2群に分けて解析しました。日常生活動作能力の変化に関しては、義足を作製した群では維持され、作成しなかった群では低下したことから、下腿切断後に義足を作成することで日常生活動作能力を維持できる可能性があることがわかりました。
本研究結果は、Hemodialysis International誌(透析医療における国際医学雑誌)に掲載されました。

義足は、切断によって失われた下肢の機能を補うための人工の足です。下腿切断後に義足を作成することで、手術前の日常生活動作能力に近づけることが可能なのかもしれません。本研究の結果を活かし、義足を作成できる状態であるのならば、義足作製の選択肢を積極的に提案していこうと思います。

本研究にご協力いただきました患者さん、ご指導いただきました方々に、心より感謝申し上げます。

                   リハビリテーション科 山﨑 勇人、松藤 勝太、山口 勝生

過去

学術検討会「火曜会」について

毎月、第2火曜日の19時から、管理棟6F会議室で開催しております。
大阪市立大学医学部の先生方とともに透析患者の病態、合併症をはじめ透析療法に関係する情報を主とした自主的な勉強会です。
井上病院に勤務の医療従事者をはじめ近隣の病院の先生方も参加していただいています。

「火曜会」の沿革

「火曜会」の様子

井上病院が設立された1975年の2年後の1977年から、井上病院に勤務する医師と大阪市立大学医学部第二内科の医師による「透析患者の症例検討」を目的に定期的に勉強会が催されました。

当初は井上病院設立者の井上隆先生と、大阪市立大学の森井浩世教授(当時は助教授)が中心となり、8名ほどの小さな集まりでした。

毎週火曜日の19時から2時間程度で、病院の症例検討を中心に、関連した論文での検証を行っていました。
その後、医師だけでなく病院のコメディカルの方々も参加するようになり、参加人数が増え隔週の火曜日となり、現在では月1回の定例会にとなりました。

検討内容も症例検討から、臨床研究の企画や進捗状況が主の検討課題となり、これらのテーマから派生する事柄の国際誌からの情報収集、関係するガイドラインの解読、日本透析医学会、日本腎臓学会、日本糖尿病学会、さらには米国腎臓学会、欧州腎透析移植医学会などへの出席者からの話題提供、最近では臨床研究を行う際の統計手技や倫理的配慮など臨床研究に必要な基礎勉強、そしてこの会議で積み重ねられてきた論理やデータを用いての論文の執筆、ときに本の編集など多岐にわたって前向きに活発に、精力的に議論しています。

「火曜会」による臨床研究の紹介

これまでの「火曜会」で行われてきた臨床研究のいくつかを紹介します。

業務改善活動(TQC)

血液透析終了時の血液飛散をなくそう

井上病院では昭和58年より「ヒヤリハット」の取り組みを行っており、以来医療事故の防止や感染対策、コスト削減、接遇不良などの業務改善活動を行ってきました。
そして今回、平成30年4月26日に中国で行われた「Boao CN-HEALTHCARE SUMMIT 2018」で当院の業務改善活動「血液透析終了時の血液飛散をなくそう(平成24年に実施)」を発表し、銅賞を受賞しました。

「Boao CN-HEALTHCARE SUMMIT 2018」銅賞を受賞

At Inoue hospital, in 1983, we established medical incident rules, since then ,we have continued quality control circle such as prevention of medical accidents, infection control, cost reduction, and inadequate manners.
In 2016, we improved of this QCC theme “A project for standardized procedure to reduce blood scattering just after hemodialysis session”.
This QCC was awarded the bronze prize at “Boao CN-HEALTHCARE SUMMIT 2018” held in China on 26th April.

オプトアウト

当院のオプトアウトについて

当院でオプトアウトを行っている臨床研究は以下の通りです。研究への協力を希望されない場合は、下記文書内に記載されている連絡先までお知らせください。

承認番号                     研究課題名
 219 腹膜透析患者の血糖コントロール指標についての検討
 236 維持透析患者の健康寿命延伸と運動機能障害と栄養障害の実態についての調査
 244 慢性透析療法を受ける患者の困難からの立ち直り尺度の作成
 249 血液透析患者における日常生活活動動作(ADL)の困難感と転倒リスクとの関連:観察コホート研究
 250 透析患者のCKD-MBD管理状況の違いによる副甲状腺機能・骨・血管へ影響、および予後との関連についての検証
 251 血液透析患者における CT の筋断面積と疾患発症との関連、及び経年変化の検証
 252 血液透析患者におけるカルニチン投与と筋力の経年変化との関連
 253 『透析患者における認知障害の実態と心血管疾患・日常生活活動度との関連(ODCS)』で得られた筋力、筋肉量、運動習慣、栄養摂取量と生命予後、合併症発生との関連についての検討
 255 維持透析患者における筋力低下と心不全発症に関連する因子の検討
 256 腎臓リハビテーションが機能におよぼす効果の検証
 257 慢性腎臓病進行例(CKD G3b~G5)の予後向上のための予後、合併症、治療に関するコホート研究
 263 末梢動脈疾患に対する下肢バイパス術を施行された透析患者における リハビリテーションの効果について
 264 内シャント設置術後の患者における主観的な日常生活の困難感に関する調査 ~入院期間中の作業療法の介入の効果について~
 268 透析患者のCovid-19の治療経過、ワクチンの効果について
 272 維持透析患者の食欲と栄養状態及び栄養・食事摂取状況の実態
 275 血液透析患者における大腿骨近位部骨折の分類・経過・ADLの変化について ~非透析患者との比較~
 278 下肢切断術後のQOLに関する研究
 285 院内の転倒転落を減らすための医療の質改善プロジェクト
 291 透析CLTI(包括的高度慢性下肢虚血)症例における超高齢者への外科的血行再建術
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