血管外科の概要
歩くと足が痛い・足が冷たい・足の傷がなかなか治らない
足がだるい・むくむ・血管が浮いている
このような症状があれば、血管外科を受診してください。
当科では、外傷などの一般外科的疾患に加えて慢性下肢動脈閉塞症(PAD)、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症、リンパ浮腫などの診療を行なっています。
特に当科では慢性下肢動脈閉塞症(PAD)の診療に力を入れており、診断から治療としての血管内治療・外科的血行再建はもちろんのこと、積極的に「フットケア」を行い、少しでも足を切断せずに済むように配慮しています。 また、全国的にも学会発表・講演等で、診療内容に関する成果を発表しており、他院からのご紹介も多く受け入れています。
医師紹介
谷村 信宏 [副院長]
■ 資格
日本外科学会外科専門医・指導医
心臓血管外科専門医・修練指導者
日本胸部外科学会認定医
日本血管外科学会認定血管内治療医
日本脈管学会認定脈管専門医・研修指導医
浅大腿動脈ステントグラフト実施医
腹部ステントグラフト実施医・指導医
日本フットケア・足病医学会フットケア指導士/学会認定師
日本救急医学会認定ICLS・BLSコースディレクター
AHA BLS/ACLS認定インストラクター
日本医師会認定産業医
ICD(インフェクションコントロールドクター)
対象疾患・治療について
対象疾患
▼ 末梢動脈疾患
1. 下肢救済・フットケアについて:PADに対する対策
当科では「下肢救済・フットケア」というキーワードのもと、おもに慢性下肢動脈閉塞症(PAD)や下肢静脈瘤を扱っています。
現在、高齢化・糖尿病及び慢性腎臓病の増加に伴いPADの包括的高度慢性下肢虚血 (CLTI: chronic limb-threatening ischaemia)は増加傾向であり、
特に当院では透析患者さんが多いため、いわゆる間欠性跛行ではなく、安静時痛や下肢壊疽を伴うCLTIの状態で来院される方が多くなっています。
PADの治療については、薬物治療に加えて、血管内治療(EVT)や外科的血行再建術が重要です。
最近は循環器内科等で血管内治療に重点が置かれていますが、血管内治療だけでは治癒に至ることが困難なことも多々あります。
それは、CLTIでは下腿動脈への治療がメインとなり、血管内治療では2-3ヶ月で再発・再燃することがわかっているからです。
当科ではもちろん血管内治療も自科にて行っており、血管内治療だけで治癒に至らない場合には積極的に外科的血行再建術も行います。
CLTIに対する外科的血行再建では、下腿以下へのバイパス手術(distal bypass)が必要となります。「心臓血管外科」や「血管外科」を標榜している施設は数多くありますが、必ずしもすべての大病院・大学病院でdistal bypassを行っているわけではなく、この手術が行えるのは当院を含めた限られた施設となっています。また、「救肢」(できるだけ足を切断しない、切断しても踵が残るように行う)するには、血行再建だけでなく、こまめな創処置や局所陰圧閉鎖療法(NPWT)などの追加治療が重要ですが、当科ではこの点についても自科で行って、できるだけタイムロスがないように心がけています。
他院で下肢切断を宣告された症例でも、当科で救肢できる場合がありますので、1度ご相談いただければと思います。
血管内治療症例
左:術前のCTアンギオ 右の浅大腿動脈(太ももの動脈)がつまっています。(約5cm)
右:カテーテル治療 閉塞部にステント(金属製のパイプ)を留置して拡張しました。
外科的血行再建術症例
足趾の壊死の方です。多くの施設では膝下での切断になりますが、バイパス手術によって壊死した指の切断だけで治癒しました。
2. 急性動脈閉塞
急に足や腕の血管が閉塞し、突然の脱力感や痛みが起こります。閉塞部位によっては直ちに治療を開始しないと、下肢の切断だけでなく命に関わることもあります。特に心房細動などの不整脈を指摘されておられる方は、注意が必要です。
▼ 静脈疾患
1. 下肢静脈瘤
足の血管がみみず腫れのようにふくれるものから蜘蛛の巣状のものまでありますが、治療の対象となるのはやはりみみず腫れにはれたようなものです。
症状としては下肢が疲れやすく、色素沈着もおこります。治療の基本はとしては弾性ストッキングの装着ですが、あくまでも症状を軽減するだけで静脈瘤自体を治療するわけではありません。
当科では静脈瘤の状態に応じて、ストリッピング手術、静脈結紮療法(高位結紮術)、フォーム硬化療法をおすすめしています。多くの方は足がきれいになって短いスカートがはけるようになったと喜んでいただいています。
2. 深部静脈血栓症
深部静脈血栓症は筋肉の中を走っている深部静脈が血栓閉塞する病気です。
症状は足に急にむくみと痛みがおこり、場合によっては「エコノミー症候群」として有名になった肺塞栓症を起こすこともあります。
とにかくできるだけ早く診断して、血栓を溶かすお薬を使用しますが、診断時期及び症状によっては、手術的に血栓除去も行います。
しかし慢性期に来院されると、むくみがとれにくいこともあります。そのような場合には弾性ストッキングを継続して装着していただくことになります。
▼ フットケア
創傷ケア自体はもちろん重要なことですが、それにも増して重要なのは、足にきずをおこしやすい状態の方、特に糖尿病の方々に対して、きずを作らないようにしていただく「予防・教育」です。 当院では、必要な研修を終了した看護師(フットケア指導士)による専門外来(フットケア外来)も行っていますし、院内には同じ資格を取得しているスタッフが医師を含めて5名在職しており、全国的にもフットケアに力を入れている施設と言えます。
「創傷ケア」には治療に数ヵ月の治療期間を要する場合も多く、末梢血管や感染管理の専門的な治療が非常に重要となります。また術前後のリハビリテーションをはじめ各診療科と綿密な連携を取りながら治療を進めていく必要があります。
北摂地域には多くの総合病院がありますが、末梢血管の治療や創傷ケアを積極的に行っている施設はまだまだ少ないのが現状です。当院はこれからも創傷ケアの中心的施設としての役割を担っていきたいと考えています。
血管外科からのお知らせ
エムスリー㈱の取材を受けました
谷村医師が「M3(エムスリー)(医師への最新医療情報提供の日本最大級の医療従事者専用サイト)」の取材を受け掲載されました。
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